山梨県が持つ“食”の可能性に迫る――『「ワイン県やまなし」美酒・美食推進事業』実施中
日本ワイン発祥の地であり、また日本一のワイン生産量とワイナリー数を誇るなど、名実共に“ワイン王国”として知られている山梨県。2019年に県知事が発表した『山梨「ワイン県」宣言』を皮切りに、県内では山梨ワインのさらなる発展を図るための取り組みが活性化しています。
その一連の流れを汲んだ動きの一つが、世界的にも人気の高い甲州ワインを始めとする県産酒と、豊かな自然環境の中で育まれた県産食材を主役とする『「ワイン県やまなし」美酒・美食推進事業』です。
今回の記事では、同事業におけるプロモーションの一環で行われたメディアツアーのレポートを通じて、「食」を切り口とした山梨県の魅力に迫ります。
県産酒と県産食材のスペシャルペアリングを楽しむイベントが県内2か所で開催
山梨県の豊かな食材を活用した新たな食ブランドの確立、及び「食」を目的とした同県への誘客促進と観光産業の収益向上を図るための取り組みである『「ワイン県やまなし」美酒・美食推進事業』。
今回お招きいただいたのは、同事業における令和4年度の秋冬プロモーション企画の一つであり、県内外のメディア・報道関係者、食関係者を対象とする完全招待制ツアー『やまなし美酒美食フルコースイベント』です。
日程は2022年11月下旬の2日間、北杜エリア・河口湖エリアの県内2か所で開催されました。本記事では、11月30日(水)に開催された河口湖エリア・夜の部の模様をお届けします。
イベント会場は、今後の展開に期待が高まる富士河口湖町初のワイナリー
イベント会場は、2022年8月11日(木)より始動した富士河口湖町初のワイナリー「7c|seven cedars winery」。こちらは次世代型“道の駅”として、同年6月11日(土)にオープンした商業施設「旅の駅 kawaguchiko base」内にあるワイナリーです。
山梨県を代表するワイン醸造家と、県内でブドウ栽培に取り組む13の農家からなる醸造チームを核とし、ブドウ栽培者に光を当てたワイン造りを目指す、これまでにないワイナリーの形を展開。
また、1次産業(農業)から2次産業(製造・加工)、3次産業(販売・サービス)までを取り込んだ「6次産業化」の展開によって、農業に関連する地域課題の解決の一端を担う存在としても、期待が高まっている施設です。
山梨県にゆかりのある、和・洋・中の豪華シェフ陣が集結
今回のイベントでは、ワイナリーの屋外テラスに設けられた開放的な特設会場にて、「やまなし美食コンソーシアム(※1)」のメンバーを始めとする3名の豪華シェフ陣が腕を振るい、和・洋・中からなる珠玉のフルコースが振る舞われました。
やまなし美食コンソーシアム(※1)…新メニューの開発や食文化の形成、歴史・芸術等の観光資源と連動した取り組みを推進することで、山梨県の新しい魅力を発信していくために県が立ち上げた団体。メンバーは、県内で活躍するシェフやソムリエを中心に構成されている。
豊島雅也シェフ/TOYOSHIMA
富士河口湖町の完全予約制レストラン「TOYOSHIMA」のオーナーシェフであり、猟師の顔も持つフレンチ料理人。静岡県、愛知県、長野県と各地で修業を積み、2013年にはボキューズドールフランスリヨン大会に出場し、team Japanとして貢献。帰国後はスーシェフとなるが、リゾートホテルの立ち上げのため、2015年に同町へ赴任し、ジビエを積極的に使用する地産地消のメニュー開発を行った。開業後は、「自然と向き合う」をコンセプトに、ジビエを軸としたガストロノミー料理を考案。現在は出身地である静岡県から山梨県までを標高で表現した料理を提供中。2022年には、ゴエミヨ山梨とテロワール賞を同時獲得したほか、やまなし美食コンソーシアムメンバー、山梨県ジビエ料理審査員を務めるなど県内で活躍中。
加藤亮平シェフ/中華 NIGRAT
山梨県甲府市にある中華料理店「中華 NIGRAT」のオーナーシェフ。銀座のミシュラン一つ星店を始めとする東京の一流店で18年間の修業を経て、同店の開業に至る。青森県出身の同氏が開業場所に山梨県を選んだのは、以前見た富士山頂からの景色に感動したこと、上質なスープ作りに欠かせない名水の地であること、自然豊かな場所でのびのびと子育てをしたかったことが理由。現在は、中華料理の根幹である「医食同源」の考え方に基づき、全体のバランスを考慮したコース料理を提供中。
窪田帆貴シェフ/和食
山梨県甲府市出身の和食料理人。実家が料理屋を営んでいた影響を受けて、料理の道を志す。地元の韮崎高校を卒業後、吉祥寺二葉栄養調理専門職学校に進学。同校の卒業後は、東京・神楽坂のミシュラン二つ星店に入店し、7年間の修業を積む。現在は故郷の山梨県で自身の店舗を構えるべく、開業に向けて準備中。
ワイナリーに込められた想い/7c|seven cedars winery
ディナー前に実施されたのは、醸造チーム統括・鷹野ひろ子氏のアテンドによる「ワイナリー見学」。古来は湖底だったという場所に建つ施設の中で、場内設備や稼働状況の説明、ブドウ栽培には不向きとされていた富士河口湖町で新たなテロワールづくりを志すことになった背景などを伺いました。
生産地は同じでも、栽培方法や性質の異なるブドウの状態を見ながら、その年ごとに最適な製法・組み合わせを追求したワイン造りを進めていくという同施設。こうした「造り手の興味を消費者に共有」するべく、県内でブドウ栽培に取り組む13の契約農家と連携し、町内に3か所のブドウ畑を用意。初年度は20,000本の生産量を見込んでいるとのことです。
また、本来は廃棄物となるブドウの搾りかすを再利用した飼料や製菓の開発に着手するなど、サスティナビリティの向上を目指す取り組みも実施されています。記念すべきファーストヴィンテージとなるスパークリングワインは、2022年12月18日(日)にリリース予定。今後は同施設のワインをゆっくりと楽しめる宿泊施設や、ワイン関連グッズを取り扱う併設ショップの開業も計画中とのことです。
この日限りの特別なフルコースを、記念すべきファーストヴィンテージと共に
ワイナリー見学にて、富士河口湖町の風土や7c|seven cedars wineryのワイン造りに関する知識を蓄えた後は、お待ちかねのディナータイム。山梨県の豊かな自然環境の中で育まれた県産食材と、同施設のファーストヴィンテージを始めとするバラエティ豊かな県産酒のスペシャルペアリングが楽しめる、この日限りの特別なフルコースでおもてなしいただきました。
【肴】鹿肉ジャーキーのおもてなし/デラウェア&ショイレーベ スパークリング
獲れたての鹿もも肉を使用したジャーキーです。完全に乾燥させないことによって、柔らかくしっとりとした舌触りが残り、食べ応えも抜群。ドリンクの爽やかな香りと、程よく残る鹿肉の野性味が絶妙なペアリングでした。
料理提供 | 豊島雅也シェフ/TOYOSHIMA |
ドリンク提供 | 7c|seven cedars winery |
【前菜:肉】よだれ鶏/シャルドネスパークリング
茹でた信玄どりに、砂糖・紹興酒ベースのタレを絡めていただく一品。ほんのりとした辛さと、ドリンクのきめ細やかな発砲感の相性が良く、参加者からも好評の声が多く挙がっていました。
料理提供 | 加藤亮平シェフ/中華 NIGRAT |
ドリンク提供 | 7c|seven cedars winery |
【前菜:魚】富士の介 薪のオイル/甲州バレルファーメンテーション
二夜干しした山梨県のブランド魚「富士の介」を主役とする、ワイルド感強めの一品です。脂身が特徴的な品種ですが、らっきょうベースのソースと合わせることで、さっぱりとした口当たりに。甲州の酸味や渋みとよく合う燻製オイルを仕上げにかけていただきました。
料理提供 | 豊島雅也シェフ/TOYOSHIMA |
ドリンク提供 | 7c|seven cedars winery |
【椀】銀杏の摺流しナマズの炭火焼き/旦 純米大吟醸
河口湖で獲れたナマズと銀杏を合わせた一品です。湖のジビエであるナマズの身は、脂が少なく、うなぎに近いホロホロとした食感。追加で提供された味わい深い『焼き銀杏』によって、重厚感がありつつも、飲みやすい旦とのペアリングをより一層楽しめました。
料理提供 | 窪田帆貴シェフ/和食 |
ドリンク提供 | 笹一酒造 |
【点心】スッポン焼売&富士桜ポーク腸詰め/大樹海
クリーミーな卵と独特な食感の身を使用したスッポンの焼売、柔らかくもジューシーな舌触りがクセになる甲州富士桜ポークのタン入り腸詰めです。口当たりがよく、飲みやすいブレンデッドウイスキーと合わせることで、マイルドな味わいに落ち着くマリアージュでした。
料理提供 | 加藤亮平シェフ/中華 NIGRAT |
ドリンク提供 | 井出酒造 |
【肉料理】富士山麓鹿肉縄文焼き/プティヴェルド
土窯で調理した富士山麓産の鹿肉を、高級茸の代表格である香茸のソース、まろやかなニンジンのソースと合わせていただく一品です。ローストのニュアンスも感じられる、2019年もののプティヴェルドとの相性も抜群。一度も冷凍せず、低温熟成させた鹿肉は絶妙な水分率となっており、弾力を残しつつも、見た目の印象を覆す食べやすさでした。
料理提供 | 豊島雅也シェフ/TOYOSHIMA |
ドリンク提供 | 7c|seven cedars winery |
【〆】鹿麻婆豆腐/スパイスエール
薪で火入れを行い、大葉とモミにさらしてコーティングした鹿のロースを、ほんのりと山椒が香る温かい麻婆豆腐に取り入れた一品。見た目ほど辛くはないため、富士吉田産の山椒も含まれる和テイストなスパイスエールと調和する、〆にピッタリのペアリングでした。
料理提供 | 豊島雅也シェフ/TOYOSHIMA、加藤亮平シェフ/中華 NIGRAT |
ドリンク提供 | BRIGHT BLUE BREWING |
関連イベントも盛りだくさん、「ワイン県やまなし」の魅力を味わい尽くそう!
同事業の秋冬プロモーション『お酒の数だけ、美味しい旅がある。やまなし』では、本記事でご紹介したメディアツアー以外にも、観光客・県民向けに魅力的な関連イベントが企画されています。以下に概要をまとめますので、ぜひチェックしてみてください。
『やまなし美食ウィーク 美酒美食巡り』
「やまなし美酒美食セット巡り」をテーマとする、県内全域開催のイベント。本記事で取り上げたメディアツアーと同様に、県産食材を使用した料理と県産酒のペアリングを楽しめるイベントです。詳細は決定次第発表されるとのことなので、以下リンク先にて山梨県の情報をチェックしておきましょう。
開催期間 | 2023年1月中旬~2023年2月上旬予定 |
開催場所 | 山梨県内のレストラン及び宿泊施設 |
『やまなし美酒めぐり デジタルスタンプラリー』
山梨県や美酒に興味関心を持つ観光客・県民向けに、バラエティ豊かな県産酒を知ってもらうためのきっかけづくりを目的とするイベントです。対象のワイナリーや酒蔵を巡ってスタンプを貯めると、県内の美酒や豪華賞品のプレゼントも。イベントは現在開催中です。参加方法などの詳細は、以下リンク先をご覧ください。
開催期間 | 開催中~2023年1月31日(火) |
開催場所 | 県内52か所のワイナリーと酒蔵 |
山梨県の“食”を切り口とした、今後の地域振興に期待
「食」を切り口とした山梨県の魅力は、恵まれた自然環境とそこから生まれた食材、それらに魅せられて集まった生産者や料理人の想いが集約して形成されているように思いました。この土地ならではの贅沢なロケーションで洗練された美酒美食を味わうことは、より良い旅行体験に繋がります。山梨県にお越しの際には、生産者や料理人の想いが詰まった美酒美食を、その背景にあるストーリーも含めて味わっていただけますと幸いです。
取材/三枝善貴
写真/株式会社VISITEC
※本記事内に記載されている内容は、全て取材時点の情報です。常に情報の正確性を保証するものではございませんので、予めご了承下さい。最新の情報については、県や企業の公式情報をご確認いただくか、直接お問合せをお願い致します。尚、本記事内の写真、文章につきましては、一切の無断転載・無断使用を禁止させていただいております。
追記:2023年2月3日(金)に「美酒美県やまなし」のWebサイトが開設されました。